聖林寺を有名にしたのは哲学者の和辻哲郎といわれています。和辻哲郎は『古寺巡礼』(岩波書店 1919年)の中で奈良の博物館にあった聖林寺の十一面観音立像を見てこの仏像の美しさを称賛しています 多くの人が訪れる聖林寺の十一面観音立像はアーネスト・フランシスコ・フェノロサに見出されたもので「聖林寺に移った観音さまは明治20年、アメリカの哲学者フェノロサによって秘仏の禁が解かれ、人々の前にその美しい姿を初めて現した。この時、フェノロサの驚き尋常でなく、門前から大和盆地を指して、「『この界隈にどれ程の素封家がいるか知らないが、この仏さま一体にとうてい及ぶものでない』と述べたと伝えられている。」と聖林寺のホームページに記載されています。フェノロサは明治時代に来日した「お雇い外国人」で、東京大学で講義する傍ら、日本美術に関心を寄せ、美術品の収集や古社寺を訪れていて、奈良にも数回に亘って訪れていました。今に残る本堂脇の厨子は十一面観音立像の保存のためにフェノロサとビゲローらが明治21年に寄進したものであり、厨子の後部には「文化財保護施設の魅とも言うべき工夫がなされている」と筆書きがされています。この仏像は均整のとれた体で豊満なお顔立ちと量感のある上半身と美しい纏衣や指先などミロのヴィーナスと比較される仏像彫刻の優作とされています。 当ドライブコースは西名阪自動車道を起点としています。国道169号で天理市を抜け、崇神天皇陵や景行天皇陵を車窓に見て南下します。途中、大神神社へ立ち寄られるのも良いでしょう。参道の杉木立が美しくさわやかです。国道169号のゴールである谷交差点を左折。国道165号を東行し薬師町交差点を右折します。そこからは山に向かい進行。しばらく走ると聖林寺の看板が右側に見えてきます。看板案内のとおり右に曲がり橋を渡って坂を上がると聖林寺駐車場があります。門前からは大和盆地の古墳や三輪山を一望に見渡せます。聖林寺を拝観されたのちは多武峰(とうのみね)の談山神社へにも足をのばされてはいかがでしょうか。